ホーム > オフマガ ニュース一覧 > 老舗純文具店オカモトヤ 夜間・早朝の無人化営業「むじんぶんぐ」スタートから1年9カ月の営業で感じたことは...
老舗純文具店オカモトヤ(東京都港区、鈴木美樹子社長)は2023年10月2日、午後7時より文具専門店初、夜間・早朝の無人化営業「むじんぶんぐ」をスタートして1年9カ月が経過した。
通常は、午前10時オープン・午後6時閉店・土日祝は休業という形態をとって運営をしてきた。
「むじんぶんぐ」では、従来の営業時間外だった夜間・早朝の無人営業を行うことでお客様の利便性を高めていく。
有人による通常営業と無人営業のハイブリッド営業は、文具店舗減少で専門店としてのニーズを感じたこと。それと人材を増やす事なく、売上アップを図ることを考えていた時、本屋での無人化営業の記事が目に飛び込み「本屋で出来るなら文具屋もできる」と思いチャレンジに踏み切った。
「むじんぶんぐ」を始めるにあたり初期投資は250万円ほど。店内は365日、電気と冷暖房がついてるため月々の経費は、システム利用料や光熱費などで10万円ほどになる。
利用方法は、①利用登録:1タッチで登録可能、オカモトヤのLINE公式アカウントを友だち追加。②入店:無人営業中は店舗入口の電子ロックが施錠状態。スマートフォンで店舗ドア横のQRコードを読み込むと認証・解錠され、入店できる(有人営業中は認証不要)。③会計:完全セルフ&キャッシュレスで会計。④退店:退出時は解錠操作は不要、退店後は自動ロックされる。
「むじんぶんぐ」を始めるに当たりの不安は、店のある自社ビルには他のテナントも入っているため放火の心配。そして店内商品の盗難、災害が起き際、お客様の避難など安全上の問題だったが、これはシステム構築でクリアしたという。
災害時には避難経路の出入り口の鍵の付け方を変え、二方向からお客様が逃げられるように。店内には防犯カメラを九台設置。入口には、店内の防犯カメラ映像をリアルタイムで店の外で映す。防犯カメラがあることをシールでアピールし抑止力にしている。また防犯カメラの一台にはAI検知機能を搭載。悪い事をしようと思った人がいたらアラートがくる仕組みだがオープン以来、大きなトラブルはない。
盗難に関しては有人の営業でもリスクはある。無人だからといって高まるわけではい。ある程度のリスクを許容しているというが、本屋での無人営業の検証で出た実績を信用してるという。
また高額商品の万年筆などは別の場所での保管や布を掛けて購入できない様にしている。これは、たまたま夜に通り掛かったディーラーで高級車に布を掛けて展示していた事がヒントになった。この出来事を含め、何か工夫すればお金を掛けなくても回避策はあると気付いたという。
同店周辺は官庁やオフィスビルが立ち並び、近年では虎ノ門ヒルズが建つ。
その街で「むじんぶんぐ」を平日は通常営業午後6時の閉店後、午後7時から営業を始まる。その時間帯からは、帰りがけのビジネスマンの立ち寄りがあり、終電以降には来店はない。
土日のお客様はSNSで情報を見た中学生や平日に来店できない文具好きの人が来店するので客層の幅が広がった。
売れ筋商品に関しては有人・無人の営業ではさほど変わらない。無人営業の時にも1・2階の売場は行き来できる為、のし袋、替え芯、消しゴム、学童文具など一般的な文房具が売れる。しかし、「むじんぶんぐ」だけで利益を出すには、今の倍1.5倍の売上をつくる必要があるという
今年の春休みには文具店オカモトヤの認知度を上げるため、無人営業の時間帯だけに100円ガチャガチャを設置した。カプセルの中には、通常の営業時間帯だけに使える有効期限一年のクーポン券を入れ相乗効果を狙った。
鈴木社長が、この1年9カ月の営業で感じたことは、「店の立地からくる街の治安の良さと、お客様の礼儀正しさと協力」という。
それはシステムエラーが起きレジが使用できなかった際、お客様は商品を置いて帰って行った。どうしても急ぎでボードマーカーが欲しかったお客様は、多めの現金を置き『どうしても今必要だから、後でお釣り取りに行きます』っとメッセージ書き残した律儀な方もいた。
鈴木社長は「文具業界では、人手不足や後継者がいないという話をちらほら聞く。どこか一店舗でも無人営業の文具店を始めれば追随する店、興味を持つ会社が出てくるかもという想いもあります。おそらく防犯や万引き等のリスク受容や地域特性なども検討上のハードルになるとは思います」と指摘した。
続けて「無人営業のいいところは、レジを無人にする事で、その分空いた人材が何か別の作業ができる。弊社は今度、スタッフ全員で外部研修に参加しますが、その時間帯は無人営業に切り替える事が出来ます。省人化することで、人手不足の解決になり、業界からの専門店減少が少なくなればという思いがあります」と話した。
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鈴木 美樹子社長 |