ホーム > オフマガ ニュース一覧 > 卸・小売業は前年度比86%に、矢野経済研究所が、東日本大震災における経済復興プロセスと主要産業に与える影響を発表
矢野経済研究所では、東日本大震災後の被災エリアの復興プロセスと主要産業への影響を検討すべく以下の調査要綱において調査を行った。
1.調査期間:2011年3月29日~31日
2.調査対象:主要12産業分野(建設業界、住宅業界、建材業界、建機・レンタル業界、自動車業界、電機・精密・電子部品業界、化学業界、食品業界、小売・外食・レジャー業界、運輸業界、エネルギー業界、医療業界)
3.調査方法:
(1)阪神淡路弾震災が兵庫県に与えた影響を指数化し被災エリアの県民経済に適用した。
(2)主要産業に与える影響については各産業分野の担当事業部長、主席研究員が責任執筆した。
<本調査における東日本大震災による被災5県とは>
本調査における被災5県とは東北4県(青森、岩手、宮城、福島)+茨城県 をさす。
調査結果サマリー
1.復興期の県民経済について
■震災が各産業に与えるインパクトが阪神淡路大震災と同様であると仮定すると、復興初年度の建設部門は2010年度比167%、金額ベースで同1兆3370億円増が見込まれる。
■復興初年度から4年間における被災5県の建設部門の県内総生産の総額は、少なくとも12兆2000億円を越える。
■卸・小売業は前年度比86%ともっとも大きな影響が出る。また、回復までの期間も長期化する。
■ただし、これらは福島第1原発の影響は考慮されていない。また、被災県の社会、経済、地理的条件や人口構造、そして、震災+津波という特殊な被災形態を鑑みると、原発の影響を除いても東日本大震災の被害は、阪神淡路大震災に比べ広域、甚大かつ長期に及ぶものと推察される。
2.主要産業に与える影響について
□建設部門を中心に大きな復興関連需要が見込まれるものの、原発問題の長期化も相まって消費マインドの低下、電力供給不足、エネルギーコストの高騰、海外における日本製品に対する過剰反応など、生産、流通、消費、サービスなど広範な産業分野に深く、長期的な影響を及ぼす。
□とりわけ、電子材料、自動車関連部材などの先端分野ではグローバル・サプライ・チェーンに対する影響も大きく、素材・部材分野における競争環境が世界レベルで変化する可能性もある。
□一方、すべての産業において次世代に向けての変化が加速、スマートグリッド構想や次世代都市ビジョンの創造、新エネルギー・環境関連技術の開発促進、製造業における高付加価値品シフトの加速、グローバル戦略の再構築による国際競争力の強化など、産業の新陳代謝や社会・経済構造の革新が急速に進む可能性も高い。温存され続けてきた古い体質、棚上げされてきた課題を一挙に清算し、新たなビジョン、新たな戦略をもってグローバリゼーションを勝ち抜くための契機とすること、これをもって日本復興の道筋とすべきであろう。