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【SDGs特集②】パイロット 海洋プラごみ回収・再生ペン
2021年11月10日

 今年7月、イタリアのナポリで開かれた日米欧20カ国・地域(G20)環境相会合では、海洋プラスチックごみ削減や資源の効率的な利用について議論されるとともに、「回収した海洋プラスチックごみを利用したペン」として各国代表に手渡したのが㈱パイロットコーポレーションの「スーパーグリップG オーシャンプラスチック」。オーシャンプラスチックは、ボディの下軸に海洋プラスチックごみからリサイクルした再生樹脂を使用。その他の部分についても再生材を使用し、消耗部分を除いた全プラスチック重量中の74%を再生材とした油性ボールペン。昨年12月に発売すると、企業のノベルティ用途などに好評で半年で約50万本を販売している。

開発のきっかけは社内での『ペン回収プログラム』だ。「昨年4月からテラサイクル社と協働し、社内で使用済み筆記具の回収を通じたプラスチックごみ廃棄量削減に着手。その取り組みの中で、海洋プラスチックごみからリサイクルした再生樹脂があり、ボトルの原料などに採用されていることを知り、筆記具にも採用できないか相談した」と、その背景について商品企画部筆記具企画課の伴野晃課長代理は説明する。テラサイクル社は、世界20以上の国と地域で様々なリサイクルプログラムを実施。これまでリサイクル不可能と思われてきたモノを回収し、リサイクルを実現している。「今回はSDGsによる環境意識への高まりなどが追い風になった。発売直後はあまり話題になりませんでしたが、日を追うごとに販売本数が伸びてきた」という。

回収されるのは、日本一海洋プラスチックごみが流れ着くと言われる長崎県の対馬。対馬海流が日本海に流れ込む入口に位置し、冬は大陸からの季節風が吹くこともあり、毎年膨大な海ごみが漂着。その約7割は、韓国や中国など海外由来のごみで、海ごみの約7割がプラスチック類であると報道されている。世界的に見ると、毎年800~1200万トンのプラスチックが陸地から海へ放出され、放置しておけば2050年までに魚よりもプラスチックの量が多くなると言われている。

伴野氏によると「漂着ごみで最も多いのがボトルキャップで、次いで漁船関連のプラスチック製ロープ、木材など。これらをまとめて回収し工場で人手により選別。プラスチックだけに分別した後、粉砕して成形剤を配合し、ペレット化した後、製品化する。このプロセスを経るわけですから当然コストがかかる。従来のスーパーグリップGの110円と同じ価格では割りが合いません。でも会社の考えは『これはそういうものでない。海洋プラスチック問題を広めていくという、パイロットの企業理念の一環として取り組んだもの』と。本体の緑がかった青はオーシャンブルーと呼んでいる。海洋プラスチックはリサイクル後に、どんな色になるのか予想がつかず偶然にできた色。そのオーシャンブルーにマッチした色を上軸に取り入れ全体をコーディネート。すると、その鮮やかさが海の色っぽく“意識が高い”と評判で、事務系色しかなかったスーパーグリップGが改めて注目されることになった。

ロゴマークやメッセージを入れられる白い軸やクリッププレート付きのタイプを用意したことで、ノベルティなど法人需要が伸びている。その一方で、店頭での個人買いも増えてきている。「販売を通じて、海洋プラスチックのごみ問題があることを知ってもらい、消費者の意識が変わるきっかけになれば。循環型社会の実現は、当社の重要な経営課題の一つ。今後もさらなる商品開発に取り組むことで、一人でも多くの方に環境について考えてもらえるきっかけを提供できれば」と語る。

 

 

スーパーグリップG オーシャンプラスチック
スーパーグリップG オーシャンプラスチック
回収した海洋プラごみ
回収した海洋プラごみ
粉砕してペレット化する
粉砕してペレット化する