ホーム > オフマガ ニュース一覧 > 書育:手で書く機会の減少は、学力への影響だけでなく、コミュニケーション能力、ものを考える力の減少にも波及する
日本国民の健全な成長・発達と日本の文字文化の継承・発展への寄与を目的とした「書育推進協議会」。その設立発表会が4月28日、東京・新宿区のアルカディア市ヶ谷で開催された。1年間の準備期間を経た同議会は、これを機に、教育に携わる人たちへ、手で書くための「児童・生徒用ワークシート」、「教師用指導書」、「書育教材集利用の手引き」などの無償配布、提供を本格化。文字を書くことの大切さ、楽しさ、効用、教育的意義などを広く社会に啓発する。
書育推進協議会は、書育活動を行ってきた5名の大学関係者と、社会貢献活動として書育活動の支援を望んでいた日本筆記具工業会が協力し、今年2月に設立。パソコンや携帯電話のメールの利用が増え、文字を書く機会が少なくなっていることに危機感を募らせ、「学習する象徴が書。手で書くことが人の成長と共にあり、さらには手で書くことによって人が育まれる」を趣旨とし、教育関係者などへ文字を書く大切さを広く伝えていく。
発表会では、会長に就任した元文部省視学官・千葉大学教授の久米公氏が「情報通信技術化が加速する現代でも、学習することと、手書きすることは密接に関係し、『書は人を創る』の意識は今後も引き継がれていく。書育と読育は車の両輪をなすもの。手書きすることが人間性の基盤である教養の獲得及び成熟に大きく関わる」と強調。「その果たす意義・役割の大切さを認識させ、書育の語を定着させるべく協議会を発足させた」と話した。
会には副会長に就任した、昭和大学客員教授・メディア教育開発センター名誉教授の小野博氏、群馬大学教育学部教授・同附属小学校校長の河野庸介氏、鹿児島国際大学・同大学院教授の千々岩弘一氏、日本筆記具工業会の堀江圭馬会長、専務理事・ 事務局長の長崎大学教育学部教授鈴木慶子さんが出席。堀江副会長は、「昨今、子どもたちが手で書く機会が減ってきていることに大きな不安を感じている。手で書くことの意義をもう一度皆さんに見直してもらうために、書育推進協議会と協同して、書育の考え方の普及活動を行って行きたい」と発言。日本筆記具工業会メンバーの関わり方については、「対象は教育現場であるため、個々のメーカー色を出したり、売り場とで書育を呼びかけるようなこと考えていない。書育普及の第一歩は、手書きの良さ、その意義をより多くの人に知ってもらうこと。そこを工業会として支援し、より多くの学校で教材を取り上げてもらえるよう、応援して行きたい」と話した。
事務局は日本筆記具工業会内に設置。主な事業計画は①「書育」に関する啓発事業、情報発信②「書育」に関する調査・研究③本会の組織強化事業④関連機関及び関係団体等との連絡折衝と協調。具体的には、書育啓発に関わるイベント開催、ホームページ活用による書育関連情報発信、季刊会報の発行、書育習教材開発への協力・支援、関連研究情報を収集、会員相互の交流を深める研究会や懇親会を開催などが挙げられている。
書育推進のための会員、個人の一般会員と、法人及び団体の賛助会員を広く募集しており、初年度60社程度を見込んでいる。
小学校低学年から中学生までを対象とした書育教材集(平成22年度版)の配布をすでに開始。教材は書育によって育まれる三つの力「学習力」・「コミュニケーション力」・「創造力」と「手書きへの興味」を育む4つの単元から構成。手で書くことの有意義さを伝えるだけでなく、書くことで思考を発展させ、発想を広げていく手法も学べる。同議会では、国語科など教科教育の発展教材として、または総合的な学習の時間など教科横断的な学習教材としての活用を期待している。教材は書育ホームページからダウンロード可能。またCD-ROM版の教材集も提供する。